エビングハウスの忘却曲線の意味誤解していませんか?効率的な記憶定着方法とは

「こいつ、何度言ったら覚えられるんだろう??」
部下に対して、そう思った経験はありませんか?

記憶力が良い人とそうではない人の違いは、脳の使い方がうまいかどうかの違いしかありません。脳の使い方がうまい人は、エビングハウスの忘却曲線を正しく理解して、記憶を効率的に定着させています。

一般的に受験勉強をしている時など、暗記科目はこの忘却曲線に基づいて復習をすると効率的と言われています。

よく言われるのが「人間は1日経つと74%の事を忘れ、26%程度しか覚えていない。記憶を定着させるには忘れる前に復習する事が大切」という事です。

このような教えからエビングハウスの忘却曲線は、忘却の割合を表しており、人間の記憶の「忘れやすさ」を示している曲線と思われています。

しかし、これは本当のエビングハウスの忘却曲線ではありません。

今回は、そんなエビングハウスの忘却曲線の誤解を紐とき、効果的な部下の育成方法をお伝えしていきます。

それではご覧ください。

エビングハウスの忘却曲線の誤解

「エビングハウスの忘却曲線」が誤解される原因は、縦軸が「記憶される割合」横軸が「時間」で表現されていることに起因します。

人間の記憶は、1時間後に56%を忘れてしまうという曲線になっており、この値で表現されたグラフから導き出された理論は「記憶がなくなる前に振り返ろう」ということです。

「忘却曲線」という名前から、人間の記憶に着目した研究であることは確かなのですが、
実際は「記憶される割合」を示した研究ではなく「記憶の再生率」を発見した研究だったのです。

エビングハウスの忘却曲線=『記憶の再生率』

提唱した心理学者エビングハウス氏は、被験者に無意味な綴りを複数並べ、暗記させるという実験を行いました。

この文字を5分で暗記してみてください。
「めくひ」「えいむ」「あぼり」
「へすに」「みうぷ」「せてち」

エビングハウス氏は、暗記後に「1時間、1日、1週間」と時間をあけ、もう1度覚えなおすのにどれだけ時間が節約できるのかグラフに表しました。それが「記憶の再生率」という忘却曲線なのです。

「記憶の再生率」というのは、1度覚えようとしたことをもう1度覚えなおすことです。

『記憶の再生率』=もう1度覚えなおすこと

複数並べられた無意味綴りを「1時間、1日、1週間」と時間をあけ再暗記した時に、どのくらい記憶を再生することができるのか?という指標になります。

そして、結果的にどれだけの時間が節約されたのか。

再び記憶するまでにかかる時間を表したのが「節約率」です。

「節約率」
=「節約された時間」÷「1回目に必要だった時間」
「節約された時間」
=「1回目に必要だった時間」-「覚え直すのに要した時間」

エビングハウスの忘却曲線は「無意味な綴りを暗記したあとの記憶の再生率」であり、復習による忘却防止の可能性を指摘しているのです。

部下に教えたい「記憶の反復」の重要性

エビングハウスの忘却曲線から得られる教訓は「1日を振り返れば、その日のことを約74%の時間で再び思い出すことができる」ことです。つまり、1回目より2回目のほうが覚えるのにかかる時間や負担が少ないということなのです。

また、人間の脳の海馬は、30日で忘れてしまうと言われています。記憶するためには、同じ内容を何度も反復することが重要です。

海馬を使って、長期記憶にたくさん情報を定着させるためには「同じ情報を何度もインプットし続けること」が重要です。

海馬は何回も同じ情報が入ってくると「こんなに頻繁に入ってくる情報なんだから重要に違いない」と思って長期記憶のほうへ移してくれるようになります。インプットに加えて、実際にその情報を仕事で活用したり、お客様に説明したりすることで記憶はさらに定着します。

最初に覚えた時から30日以内に、何度もくり返し同じ情報をインプットし続けることが、長期記憶を作るときのポイントです。逆に考えると、初めて勉強したときから30日以上たっても振り返ることをしないと1からやり直すのと同じくらいの時間がかかることになります。

日頃から仕事の振り返りをすることで、自分の能力に繋がる記憶を定着することができ、1ヶ月単位での振り返りをすることで長期記憶にすることができるのです。

部下に、日報や週報の大事さをエビングハウスの忘却曲線により説明し、効率的に能力向上に繋げましょう

まとめ

エビングハウスの忘却曲線は、振り返えることで記憶の定着率が向上するという研究ではありません。

「記憶の再生率」と「時間」を軸に「1日を振り返れば、その日のことを約74%の時間で再び思い出すことができる」ということを表した曲線なのです。

「何度言ったら覚えられるんだろう」といった経験をしたときには、「1日の最後に振り返りをすること」の重要性を説きましょう。記憶しなおす時間を節約して効果的な記憶定着ができます。

さらに1ヶ月単位でも振り返りを行うことで、海馬に記憶が残る30日以内に再び覚えなおすことができ、長期記憶を効率的に増やすことができます。

記憶力の良い人、悪い人の違いも結局は脳をうまく使えているかどうかの違いでしかありません。

地道な「振り返り」が仕事で成果を出せる人材育成に繋がるのです。

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