SECI(セキ)モデルとは?暗黙知からナレッジマネジメントまで解説

「暗黙知」という言葉をご存知でしょうか?

組織のメンバーが個人的に持っている知識や情報が「暗黙知」と呼ばれています。

ハンガリーの科学者マイケル・ポランニー氏は「暗黙知とは、イノベーションを起こすために組織内で共有されるべき、個人の内面的な知である。」という言葉を残しています。

近年、個人が蓄積した暗黙知を集団で共有することの有用性が注目されています。

個人的に持っている知識や情報を他のメンバーと共有する事で、組織全体の知識・ノウハウの向上と活用を図る狙いがあるのですが、その中でも、一橋大学大学院教授の野中 郁次郎 教授らが提唱する「SECIモデル」というナレッジ・マネジメントの基礎理論が注目を集めています。

今回は、SECIモデルとは何か?その意味や実現までのプロセスについて解説していきます。

ぜひご覧ください。

SECIモデルとは?

SECIモデル(セキモデル)とは、組織のメンバーが個人的に持っている知識を、組織全体に共有することで、企業の力を高める手法です。組織の知識創造活動に焦点を当てた、ナレッジ・マネジメントのコアとなる枠組みです。

野中郁次郎教授(一橋大学大学院教授)と竹内弘高氏らによって提唱されました。

SECIモデルでは、「暗黙知」と「形式知」が重要なキーワードになります。

・暗黙知:言葉にしづらい知識・言葉にされていない知識
例:長年の経験で培ったノウハウ

・形式知:言葉や図で説明できる・すでに言葉にされている知識
例:マニュアル化され組織で共有されているノウハウ

では、この2つの知識はどのようなプロセスで、知識変換されていくのでしょうか。

SECIモデルの4つのプロセス

SECIモデルでは、個人が持つ「暗黙知」を、組織で共有された「形式知」にする知識変換のプロセスを4つのフェーズにわけて考えています。

共同化Socialization表出化Externalization連結化Combination内面化Internalization

知識変換のプロセスを4つのフェーズにわけ、スパイラルすることで戦略的に知識を創造し、マネージメントとすることを目指しています。

SECIモデルにおける4つのプロセスを、ひとつひとつ見ていきましょう。

共同化 Socializaiton

暗黙知暗黙知

共同化とは、経験を共有することによって、人から人へ暗黙知を移転することです。

暗黙知でもメンタルに関わる「精神的暗黙知」と、技能的な「身体的暗黙知」が存在します。これらの暗黙知を共有するには「共体験」が重要になります。体験をなんらかの形で共有しない限り、他人の思考プロセスに浸透させることは不可能なのです。

例:職人になるため、師匠の仕事を見よう見まねで覚える修行。
言葉による指導や、マニュアルは存在していない。

表出化 Externalization

暗黙知形式知

表出化とは、暗黙知を言葉に表現して、明確な概念として表現することです。

暗黙知が概念やコンセプト、モデルなどの形を形成しながら徐々に形式知として明確になっていくプロセスです。野中氏は、暗黙知から形式知に変換するプロセスこそ、知識創造の真髄であるとしています。

表出化には、帰納法や演繹法などの論理思考も有効な方法です。

例:新人が読めばわかるように、言葉や図で表現したマニュアルを用意。

連結化 Combination

形式知形式知

連結化とは、明確な概念となった異なる形式知を組み合わせたり、編集、再配置、再構築して「新たな知」を創造することです。

組織に蓄積されたデータベースやネットワークを用いて、情報を体系的な知識へと変換することが多く見られます。

例:作成したマニュアルを他の部署と共有する事で、新たな視点や発見が生まれ包括的なマニュアルを作成できる。

内面化 Internalization

形式知暗黙知

内面化とは、連結化された形式知を、暗黙知として自分のノウハウ・スキルとして体得することです。

形式知を個人個人の暗黙知へ身体化する為、行動による学習が重要になります。形式知が、個人へと身体化されることで、その個人と所属する組織の知的資産となるのです。

例:マニュアルの内容を実践すると、自分の中で新たなノウハウが生まれる。

ナレッジマネジメントにおいては、個人の暗黙知を組織の形式知に変換し、組織の形式知をその他の個人の暗黙知になることが望ましいのです。

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは、「ナレッジ=知識」を「マネジメント=管理」するという言葉です。

組織には、膨大な数の知的資産が存在しています。個人が所有する知識や情報も含め、有効に活用できるかどうかで事業の成功が左右されると言っても過言ではありません。

ナレッジ・マネジメントでは、SECIのプロセスを管理すると同時に、このプロセスが行われる「場」を創造することが重要です。

SECIモデルにおける知識変換の「場」

SECIモデルにおいて、知識変換を活発化するには、それぞれのフェーズに応じた「場」が必要です。

豊かな知識創造が行えるかどうかは「場」のデザインにかかっています。知識変換の「場」は、SECIモデルの各フェーズに対応する形で、4つのパターンに分けることができます。

・創発場 共同化に対応
・対話場 表出化に対応
・システム場 結合化に対応
・実践場 内面化に対応

SECIモデルにおける4つの「場」を、ひとつひとつ見ていきましょう。

創発場 共同化に対応

共同化が行われるのが「創発場」です。

「創発場とは、個人が自己と他社の境界を超越し、他者に共感する世界」と野中氏が表現するように、1人では、共同化を行うことは不可能です。

経験や信念、考え方など暗黙知を共有するのが、創発場なのです。

例:休憩中の雑談・何気ない会話・他部署の人とのコミュニケーション

対話場 表出化に対応

表出化が行われるのが「対話場」です。

表出化とは、暗黙知を言葉に表現して、明確な概念として表現することでした。表出化にマニュアル作成が含まれるように、対話場は偶然発生するものではなく、意図的に設けられます。

個人個人が対話を通じて暗黙知を言語化・概念化して形式知に変換するための場なのです。

例:プレゼンテーション・ミーティング

システム場 結合化に対応

連結化が行われるのが「システム場」です。

形式知を共有・編集・再配置・再構築し、新たな体系の形式知へと統合するプロセスなので、個人個人が形式知を持ち寄れる場が必要です。

システム場は、多くのメンバーからの知識を持ち寄ることが重要な為、対面である必要はなく、むしろ仮想空間の方が適しています。

例:ビジネスチャットワーク SlackChatworkなど 

実践場 内面化に対応

内面化が行われるのが「実践場」です。

形式知が個人の暗黙知へと身体化してく場なので、特に決まった場所や状況はなく、普段の仕事場が「実践場」だと言えます。

それぞれ個人に委ねられている為、形式知を束ねるリーダーの経験的要素を提供することで、暗黙知への移転・発展を促すことができます。

例:個人の仕事における振り返り

まとめ

SECIモデル(セキモデル)とは、組織の知識創造活動に焦点を当てた、ナレッジマネジメントの核となるフレームワークです。

ナレッジマネジメントを理解する事で、組織のメンバーが個人的に持っている知識や情報を組織全体に共有し、企業の力を高めることが可能になります。

是非、場のデザインを考えていただき、知識変換を活発化を促していただければと思います。

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