「大きな会社に入れば一生安泰だ」
日本企業の終身雇用や年功序列といった形は崩れ、企業が長年かけて築いてきた常識や優位性が一瞬で崩れ落ちる可能性もある現代。
インターネットやスマートフォン、通信機器などの発達によって、世界中の情報が一瞬で手に入る時代になりました。
時代の変化がますます激しくなる中、企業組織においても変化が見られています。これまでの階層型の管理組織では、力を発揮することが難しくなっており、組織も変化に適応できるよう見直す動きが進んでいるのです。
変化に強い組織の代表例が「自律型組織」です。
組織のメンバー1人ひとりが自律的に行動をすることで、時代の変化が激しくても、素早く対応することができます。
そこで今回は、自律型組織の意味から、その自立型組織を実現する方法まで、詳しく解説します。
ぜひご覧下さい。
自律型組織とは?
自律型組織とは、権力が組織の一部に集中せず、分散されている新しい組織形態です。
ティール組織やホラクラシー組織など「自律分散型」の組織のことを指しています。
これらの組織は、これまでのような上下関係を伴う役職がなく、上から下に向けたピラミッド型の指示系統や意思決定のプロセスがありません。
また、意思決定のルールが明確に決められており、全メンバーに権限が委任されている為、1人ひとりが自ら考え、最適な行動を選択できる組織となっています。
自律型組織が注目される理由
従来の高度経済成長期から続く「管理型組織」によって、多くの企業が上からの指示や命令によって組織を動かす構造を採用して来ました。
しかし、不安定で複雑な「VUCA」と呼ばれるような現代においては、上からの指示がなくともメンバーが自ら考え行動する「自律型組織」の方が変化に強いとされており、注目を集めているのです。
Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字から、変化が激しく不安定で不確実、複雑な現代を表す言葉
そして、自律型組織から近年現れているのが、ティール組織やホラクラシー組織といった「自律分散型」の組織形態です。
自律分散型組織の種類
自律分散型組織には、大きく3つの組織があります。
①ティール型組織
ティール組織とは、フレデリック・ラルー氏によって提唱された自律型組織で、「目的に向かって、組織の全メンバーがそれぞれ自己決定を行う自律的組織」の事を指します。
ティール組織は、組織の進化過程を5段階に分けて捉えられています。最終的に、第五段階目にある進化型組織をティール組織とし、組織を1つの生命体として捉え、個人も組織も進化し続ける自律型組織と考えています。
▼詳しくはこちらをご覧ください。
ティール組織とは?概念や実現する為の方法を解説
②ホラクラシー組織
ホラクラシー組織とは、組織内に上下関係が一切存在しないフラットな組織構造のことを指しています。ホラクラシー憲法と呼ばれる規範に沿ってメンバーがそれぞれ意思決定を行う自律型組織です。
その最大の特徴は、権力を人ではなくホラクラシー憲法と呼ばれるルールやプロセスに置いている事です。
ラスベガスの通販会社ザッポス・ドットコムが、ホラクラシーを導入し注目を集めました。
③アジャイル型組織
アジャイル型組織は、組織をフラットな関係のチームの集合体と捉え、各メンバーに権限を分散することで、迅速な意思決定や早いサイクルを可能にした自律型組織です。
アジャイル型組織では、各チームで意思決定を行うことができる為、市場の変化に対応でき、全メンバーの目標や方向性が明確である為、組織の安定性を維持することが可能な自立型組織です。
自律型組織を実現するために
では、自律したメンバーが集まり、ティール組織やホラクラシー組織を導入すれば
「自律型組織」ができるのでしょうか?
残念ながら、そうではありません。
ティール組織やホラクラシー組織の定義から外れていながら、独自の概念によって自律型組織を実現している企業もあるのです。
「自律」という言葉を辞書で調べると「他からの支配や助力を受けず、自分の立てた規律に従って正しく行動すること」と定義されています。
これを組織としての「自律」に落とし込むと「権限が委任された環境下で、メンバー1人ひとりが組織のビジョンと行動規範を正確に理解し、適切な行動をとること」と言えます。
つまり、自律型の組織を作るためには必ずしも、ティールやホラクラシーの導入が必要なわけではなく、組織として自律した行動を促す「環境整備」が重要なのです。
自律型組織を実現する方法
自律型組織を実現する環境整備は下記、6つのポイントがあります。
- 「自律型組織」を目指す意味を明確にする
- 自律型組織を正しく理解する
- 行動規範となる、組織のビジョンを掲げる
- 行動を支援するマネジメントの徹底
- 自律型組織の「ガバナンス」を構築
- 十分な情報をオープンにする
ここでは、6つの重要なポイントを解説して行きます。
①「自律型組織」を目指す意味を明確にする
組織のトップである経営者が、従来の組織形態から脱却し「自律型組織」を目指すことを明確にする必要があります。ただ自律型組織はすぐに実現できるものではありません。中長期的に進めていくには、自律型組織が必要な理由について、メンバーがしっかりと理解する必要があります。
②自律型組織を正しく理解する
自律型組織は「上下の関係がなくルールが少ない」と誤った認識をされることがあります。誤解された状態だと、無秩序な組織になってしまい本質的ではありません。まずは、経営者が正しく理解し、メンバーにも正しく理解してもらうことが重要です。
③行動規範となる、組織のビジョンを掲げる
自律的に意思決定をしていくには、組織のビジョンが全メンバーに共有されていることが重要になります。既存の組織形態から、変革していくには組織のビジョンを再定義する場面も出てくるかもしれません。
意思決定に迷った時に、最適な行動の規範となるビジョンを掲げることが重要です。
④行動を支援するマネジメントの徹底
1人ひとりが自律的に行動するには、「行動を支援する」マネジメントが重要です。
いくら自律型の組織だからと言っても、個人が勝手に行動すればいいという訳ではありません。従来の指示命令による管理ではなく、目標管理や1on1、Will・Can・Mustによって「行動を支援する」マネジメントが重要なのです。
⑤自律型組織の「ガバナンス」を構築
ガバナンスとは、何を目指して行動するのか。という判断基準です。
自律型組織を、個人の意思決定に基づいた行動を勧めているとして、自由な組織と誤った認識をされることがあります。しかし、自立型組織にも行動規範となる一定のルールは必要です。
ホラクラシー組織の様に、憲法によってすべてを統治する方法もあります。
⑥十分な情報をオープンにする
自立型組織を実現するには、全メンバーが意思決定できるだけの十分な情報が必要です。組織としては、情報のオープン化を進めていくことが必要です。
SaaSなどのツールを導入し使いこなせる環境を整備することや、メンバー間での情報共有が促進される様な取り組みが重要になります。
おわりに
VUCAと呼ばれる時代において、自律型組織は変化に適応し、事業を成功に導く要因になり得る組織形態です。
時代の変化がますます激しくなる中、組織のメンバー1人ひとりが自律的に行動をすることで、時代の変化が激しくても、素早く対応することができます。
自律型組織の実現はすぐには難しいですが、今回紹介した6つのポイントを頭の片隅においていただき、少しずつ取り組んでいただければと思います。
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