新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークが急速に普及しました。
緊急事態宣言以降も
全員がオフィスに出社する事が珍しくなった企業も少なくないのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの収束後もリモートワークを継続していこう。という志向が広がる中、
リアルに会う機会が減ったことなどが要因で「部下育成」が課題になっています。
コロナ禍以前から「部下育成」の課題は存在していました。
部下育成の本質的課題は、これまでとは変わらない部分も多いでしょう。
その上で、今回は、リモートワークを活用した新しい働き方において、部下育成についての注意点を解説していきます。
それでは、ご覧ください。
リモートワークの種類
リモートワークと一言で言っても、実態は大きく4分類されます。
①ハイブリッド・リモートワーク
正規雇用者として企業に所属しながらも、会社に出社する日数を限定し、普段は自宅や外出先などをメインに遠隔地で働く形態のことを指します。
1週間の中で出社する日を前もって決めていたり、出席が必要なミーティングだけに参加したりするなど、社員に柔軟な出勤を認めるリモートワークの方式です。
現在の日本でリモートワークと言うと、多くの方がイメージされる働き方です。
②フルタイム・リモートワーク
フルタイム・リモートワークとは、正規雇用者として企業に所属しながら、勤務時間の全てを自宅やオフィス外の場所で過ごしながら働く形態のことをいいます。
出社が必要な場合でも、電話やチャットアプリ、Web会議システムを利用しながら、すべての業務をリモートでおこなう方式です。
エンジニアやクリエイター職を中心に広がっており、企業の中には全従業員に対して出社を義務付けていない企業もあるそうです。
③リモート・アウトソース
リモート・アウトソースは、業務委託契約をもとに外部で働いてもらう契約社員にリモートワークを導入する形態のことを言います。
フルタイム・リモートワークと同様に、全ての仕事を自宅やオフィス外でおこないますが、雇用形態が異なる点がポイントとして挙げられます
働き方改革をおこなう中で、各企業はリモートワークが可能な制度設計や環境構築をおこなっています。
そして、その制度を最大限に生かすために、このような外部委託型のリモートワークを導入する企業が増えています。
④テンポラリー・リモートワーク
テンポラリー・リモートワークとは、一時的な業務をリモートでおこなう働き方の形態のことをいいます。
勤務時間が固定されておらず、企業の非正規雇用者に対して一時的な業務をお願いする場合が多いです。
ただし、正社員でも休日に突発的な業務が起こった際にオフィス外で仕事をしてもらったり、外回りの営業後に帰社せずパソコンで仕事を続けることなども該当します。
リモートワークでの4つの課題
①社員同士の連携が取りづらい・コミュニケーション不足
最初の課題は、
社員同士がコミュニケーションを取りづらくなってしまう恐れがあることです。
もちろんWEB会議システムを利用すれば、会議やミーティングを実施することは可能です。
しかし、オフラインでコミュニケーションを取る機会が大幅に少なくなることで、社員同士の仕事を通じたつながりや信頼関係は薄くなってしまうかもしれません。
チームで仕事をする喜びや達成感はこれまでよりも感じづらく、人によっては孤独感や寂しさを感じてしまう人が出てくる可能性があります。
リモートワークだとしても、社員がモチベーションを高く持てるような環境を作ることができれば、業務の生産性は確実に上がります。
リモートワーク中の社員のメンタルケアも含め、しっかりとしたモチベーション管理をおこなう必要があります。
②社員の就労実態が分かりにくい
第2の課題は、社員の勤怠管理や給与管理、そして人事管理に関してです。
リモートワークでは、社員の勤務時間を直接管理・監視することができず、勤務時間中にどう働いているのか確認しにくくなります。
そのため、給与管理をすることが難しくなったり、社員の人事情報をまとめることが困難になったりします。
社員の勤務状況を把握できる体制を整え、人事情報を正確に管理するための準備をしておくことが必要になるでしょう。
社員の勤怠情報を把握する方法としては、メールやチャットツールで出社や退勤の報告をすることも可能ですが、勤怠管理システムを導入することも可能です。
また、勤務時間中にしっかりと動いているどうか確認することもできなくなるため、社用パソコンの利用ログを取ったり、webカメラを活用したりするなど、社員の勤務態度を丁寧に管理する必要があります。
③人事評価と社員フォロー・従来の評価制度で対応できない
第3の課題が、これまでよりも社員の人事評価制度が成果主義になることです。
リモートワークでは仕事のプロセスや姿勢を見ることが難しく、人事評価はアウトプットの成果を見て判断することになります。
もちろん、成果を出すことができていない社員の評価が低くなること自体は当然のことです。
しかし、上司が社員の行動プロセスを見れていなければ、成果を出せていない社員に対して適切なフォローをおこなうことができず、良い人材を社内で育成していくことができません。
また、自由度が高い仕事ができると喜ぶ社員もいれば、成果主義によるプレッシャーを感じる社員も出てくることでしょう。
社員が自らの判断で動かなければならない機会が増える中でも、しっかりとした判断や適切な行動ができるように、コーチング体制を整えることも大切です。
④計画的な人材育成が困難になる
第4の課題が、計画的な人材育成が困難になってしまうことです。
オフィス外で仕事をするテレワーク社員へは、細かい指導がしにくいというデメリットがあります。
特に、入社間もない社員は教育すべき内容が多いのですが、目が届きにくいテレワークの環境では人材の育成が難しくなるのです。
ロールモデルを設定することも難しく、またチームとしての一体感を持った組織作りが困難となるでしょう。
そこで、管理者と社員のコミュニケーションを強化するために、「1on1」という人材育成の手法を導入する企業が増えています。
1on1とは、1on1ミーティングとも呼ばれる管理者が行う社員との個人面談のことを指します。
3つの課題の解決策
変化が激しく不確実で正解のない、昨今のビジネス環境は「VUCA」と呼ばれています。
リーダーや上司に限らず、経営者さえも、今の環境に対する「正解」は持っていません。
「最適解」を探すために、組織一丸となってリモートワークの課題を超えていく気持ちは必要不可欠です。
その前提を踏まえて、3つの解決策を解説していきます。
①育成のゴールを設定する
「人を育てる」とは『こうなれば育ったと言える』というゴールを設定し、そこに向けて相手の能力と意識を高めていくことです。
これは若手社員に限らず、すべての部下に対して言えることです。
その観点で、まずはゴール設定から考えましょう。リーダーと部下の直接的な接点の多い環境ならば、お互いに多くの時間を共有する中で、漠然とではあってもゴールを設定することができます。
しかし、接点が少ないリモートワークでは、自然にゴールをイメージすることは難しいです。
あらかじめ、きちんとゴールを設定しておく事が重要なのです。
②能力を高める「トレーニング」
ゴールが設定できたら、次に重要なのは、そこへ部下を導く方法論を組み合わせることです。先述の通り、育てるとは、突き詰めれば「ゴールに向けて、能力と意識を高める」ことです。
同じオフィスにいれば、ある程度部下の行動が見えるため、最初は仕事を任せておいて、適切なタイミングで支援するということも可能です。
しかし、リモートワークでは行動が見えず、単に放置してしまうことになりかねません。
そこで、先にある程度、その仕事の対応能力を高める指導をしておいた上で、「部分的に任せる」というアクションが必要になるのです。
能力を高める指導法は「トレーニング」と呼ばれます。
進め方は「やってみせ、説いて聞かせ、させてみて、フィードバックし、見届ける」という流れです。
③意識を高める「コーチング」
部下の意識を高めるには「コーチング」という指導法を使いましょう。
コーチングとは問い掛け、考えさせ、相手から答えを引き出す指導法で、従来のティーチングと異なる指導法です。
リモートワーク中には、部下の姿を見ることはできません。
だからといって、進捗を事細かく確認したり、プレッシャーをかけて面従腹背状態にさせてしまったりすると、育成の実態が把握できなくなってしまいます。
実践する姿が見えないリモートワークでは特に、「やらせる」のではなく、自らの意思で実践するように仕向けることが大切です。
こうした中で、コーチングは必須指導スキルと言えるでしょう。しかも、コーチングはビデオ会議システムや電話で行いやすいというメリットもあります。
まとめ
これまでの部下育成の共通点は「対面」が前提でした。しかし、リモートワークではその前提が消滅しています。
これからの時代、「リモートワークで部下を育成できる」というスキルを持っていることは、リーダーの大きな強みになります。
さらに、リモートワークに合わせてコミュニケーションの取り方が変わり、部下の声をフラットに取り入れやすくなりました。従来のやり方を変えざるを得ない状況の中で、変化を起こしやすい環境にもなっています。
課題を認識し、解決、さらには活用することでさらなる成長が期待できます。
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