クリティカルシンキング(批判的思考)とは?実践法と併せて解説

「ロジカルシンキング」とは、物事を論理的に展開していく考え方です。

ご存知の通り、ビジネスパーソンが最低限身につけておくべきスキルであり、成果を出す為に欠かせないスキルです。

ただ、このロジカルシンキングには、注意点があります。

それは、
論理の前提条件や論理展開が正しくないと、誤った結論に至る可能性があるということです。

例えば
「営業部の売上成績が低迷しているせいで、会社の業績が落ちている」
「取り扱い製品を増加させて売上向上をはかるべきだ」という主張があったとします。

一見、正しい論理に聞こえますが、果たしてそうでしょうか?

この
「本当にこの論理は適切なのか」「考えるべき課題は何か」を明確にし、
正しい結論に導く思考法が「クリティカルシンキング」です。

クリティカルシンキングは直訳すると「批判的思考」です。

この批判的思考を理解する事で、直訳とは少し異なった発見ができるのです。

今回は、クリティカルシンキングの意味やメリット、ロジカルシンキングとの違いなど解説していきます。

最後まで読んでいただけると幸いです。

クリティカルシンキングとは?

クリティカルシンキング(Critical Thinking)とは、
主観や感情に流されずに物事を判断しようする思考プロセスです。

アメリカの教育界で、自分の考えや意見に客観性を持たせて判断・決断できるようにするための手法として広がりました。

クリティカルシンキングでは、
物事について考える時に「なぜか」「本当に正しいか」といった批判的な問いを行います。

自分の意見や判断に対して「間違っているかも」という批判的な視点を持ち続けることで、より実践的な意見へと近づけていくことができます。

クリティカルシンキングにおける「批判」は、必ずしも「否定」とイコールではありません。

「なぜ」
「本当なのか」
「どうして」

といった疑問を忘れないことが重要なのです。

ロジカルシンキングとの違い

冒頭で説明した通り、クリティカルシンキングと比較されるビジネス用語に、「ロジカルシンキング」があります。

▼ロジカルシンキング:
物事に筋道を立てて、各段階、各要素別に分類、分解して思考すること

▼クリティカルシンキング:
物事の前提の正誤を検証したのち、その事象の本質を見極めていくこと

「売上」「コスト」「利益」などのデータを基に、事業を効率的に継続する方法を考えるのはロジカルシンキングです。

一方で、ロジカルシンキングの基礎になっているデータについて、

「どうして今の売上なのか」
「コストは削減できないか」
「どのくらいの利益を目標にすべきか」

といった、より本質的な部分について考えるのがクリティカルシンキングだといえます。

2つの考え方は異なるものであり、相反もしません。

クリティカルシンキングをするときにロジカルシンキングの考え方を活かすことができます。クリティカルシンキングとロジカルシンキングは、両方が揃ってこそ効果を発揮します。

クリティカルシンキングが注目される理由

ビジネス環境が目まぐるしく変化している現代では、これまで正しいと考えられてきたものが、通用しなくなっているという事例は数えきれません。

環境の変化に取り残されないようにするには、従来どおりの考え方から脱却し、これまでとは違った切り口、考え方、アイディアを取り入れなければいけません。

そのために何を捨て、何を取り入れるべきなのかを批判的に見極める必要があります。

  • なぜ?
  • どうして?
  • それはどういう意味?
  • 自分が今やるべきことは?

このように、世の中の動きに対して自らの頭で思考を続けることが必要不可欠となっているのです。

また、人々が異なる考え方や価値観を持つようになり、1つの基準に合わせているだけでは、ビジネスを成功させることはできなくなっています。

そうした時代の変化のなかで、本質を見極める思考法であるクリティカルシンキングが重要性を増しているのです。

クリティカルシンキングを実践するメリット

クリティカルシンキングが注目されている理由が理解できても、どのようなメリットをもたらすのかを理解できないと実践することは難しいでしょう。

クリティカルシンキングには下記4つのメリットがあります。

  • 問題解決・意思決定の精度が高まる
  • 物事の本質を見極めることができる
  • 新たな視点や発想が生まれる
  • 検討内容の矛盾や漏れをなくすことができる

ここからは、クリティカルシンキングによって得られる4つのメリットを解説します。

①問題解決・意思決定の精度が高まる

一般論として、問題の解決方法として完璧なものはありません。
どれだけ素晴らしい方法に見えたとしても、何らかの欠陥や不足があるものです。

しかし、そうした「足りない部分」を補い、優れた方法に変えていくことはできます。
クリティカルシンキングは、そうした改善に貢献する考え方です。

物事を懐疑的に捉えることで、物事の矛盾や漏れを極限まで低減するだけでなく、
検討課題を極限まで掘り下げることが可能となるのです。

議論が本質に近づくにつれ、自分たちが取り組むべき課題や解決方法が明らかになります。

それにより意思決定までの時間と労力を無駄に使うことなくビジネスを進めることができるでしょう。

なぜなら、クリティカルシンキングを通じて
物事や意見の矛盾や漏れを見つけ出すことができるからです。


無駄な議論や余計な情報を切り離すことで、議論が簡潔になる点もメリットです。

本当に重要な問題のみに集中できるようになり、解決に向けた取り組みも効率的になるからです。

②物事の本質を見極めることができる

クリティカルシンキングは、物事の本質を見極める思考プロセスでもあります。

「なぜこうなっているのか」「これは本当に正しいのか」といった疑問を持つことで、主観的な意見ではなく、客観的な考えを持てるようになるからです。

また、実際には必要のない論拠やデータを取り除き、本当に重要な情報だけを取り出すことにも役立ちます。

不要な情報を減らすことができれば、
議論や意見を本質的なものへと近づけることが可能です。

そうすれば無駄な時間や労力をかけずに済みますし、多くの人を納得させられる考えを持てるようになります。

思考を続けることで余計なものが削ぎ取られ、最終的に物事の本質に最も近いものが残るのです。

③新たな視点や発想が生まれる

クリティカルシンキングでは、ある意見や考え方について疑問を投げかけます。

例えば、
「残業なしで仕事を終わらせるためには、人員補充が不可欠だ」という意見に対して、

「そもそも仕事量は適切か?」
「効率化はできないのか?」

など、批判的に考えていくものです。

そうすると、
「人員補充が必要だと思っていたが、別の解決法があるかもしれない」と気づくことができます。

そのままでは1つの対応策しかないと思える問題に、
新しい解決法を示す可能性があるのです。

新しい選択肢が必ずしも最良の答えとは限りませんが、それぞれを比較することでより望ましい結果を導くことができるでしょう。

④検討内容の矛盾や漏れをなくすことができる

検討した内容に対する矛盾や漏れなどを低減できる点。物事に対し、

  • 本当にそうなのか?
  • 検討課題はないか?

など疑問を持つ姿勢は、矛盾点の洗い出しを可能にしますし洗い出された矛盾点を一つ一つ解決していけば、矛盾だけでなく漏れにも気付けます

また、検討しつくした内容は適正なものである可能性も高いです。そこから、正しい情報に基づいた結論を導き出すことも可能でしょう。

クリティカルシンキング実践の3ポイント

クリティカルシンキングのメリットがわかると、実践するためのポイントが木になるところです。

クリティカルシンキングを実践するためのポイントは、大きく3つあります。

  • 常に目的(ゴール)を意識する
  • 思考の癖・偏りを意識する
  • 問い続ける

実践のポイント3つをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

①常に目的(ゴール)を意識する

クリティカルシンキングにおいて、目標設定はとても重要です。

なぜなら「何のために思考するのか」を明確にしなければ、考えることにばかり時間と労力を費やしてしまうからです。

ビジネスにおけるクリティカルシンキングは、あくまで「目的」のために行い、それを達成するために役立ててこそ意味があります。

目的を正しく設定することで、細かいことばかりに意識を向けてしまったり、議論のための議論をしたりするミスを避けられるのです。

本質を捉えることは重要ですが、そこには必ず実践的な目的が不可欠になります。

ビジネスには必ず目標や理念がありますから、
クリティカルシンキングを実践する際にも、それを意識することが必要なのです。

最初のステップでは、

  • どんなことがしたいの?
  • どんな状況を実現させたい?
  • それはどういった理由から?

このような問いかけを通して客観的思考を行います。それにより、

  • 目指すゴールとそのレベル
  • 達成期限

などをできる限り明確に設定するのです。

ゴールの設定が具体的になるほど、クリティカルシンキングはスムーズに進むでしょう。

②思考の癖・偏りを意識する

どれだけ中立公平に見える人でも、人間は必ず「偏見」を持っているものです。
自分の経験や記憶がある以上、完全に主観から抜け出すことはできません。

クリティカルシンキングでは、
個人が持つ思考の癖や偏りについて、予め考慮しておくことが大切です。

偏見や主観から抜け出すことはできなくても、
「偏見や主観だけで考えていないか」と問うことはできます。

他の視点や異なる考え方から自分の意見や思考を批判的に検証し、客観性を持たせるためには、「自分の考え方は偏っている」「間違っている可能性がある」という自覚が不可欠です。

最初は、自分の思考に疑念を持つことに違和感や嫌悪感を抱く人もいます。しかし、より良い答えにたどり着くためには、改善できる点を探す作業が必要です。

批判的に思考するというのは、
「もっと良い考えがあるかもしれない」と考えることでもあります。

③現状を分析する・問い続ける

次のステップは、現状の分析。最初に設定したゴールやそのレベル、また達成期限の実現に向けて、現在の状況がどうかを細部にわたり調査します。

現状の分析を丁寧に行うことで、次のステップが容易になるのです。ゴールに沿って丁寧に、現時点でどのような状況になっているのか洗い出しましょう。

  • 最初に設定したゴールと現状の間にどんな乖離があるか
  • 乖離の程度はどのくらいか

を測定・分析し、課題を見つけます。

自他共に思考のクセがあるという暗黙のルールはありますが できる限り客観的な視点、論点から議論を進めるとよいでしょう。

クリティカルシンキングを実践する上でもっとも重要なのは「問い続ける」という点です。

物事の本質を見抜く考え方は、短期間で身につくものではありません。
そのため、普段からクリティカルシンキングを実践するように心がけながら、何度も繰り返していく必要があります。

また、目の前の問題を解決するために思考し、そこから行動をしたなら

「本当にこの方法が最善だったか」
「どこかに間違いはなかったか」

を考えることも重要です。

絶え間なく変化するビジネスの世界では、1つの課題を解決しても、すぐに別の課題が見えてくるケースも珍しくありません。

批判的な考え方を身につけるためだけではなく、それをビジネスで活用するためにも、常にクリティカルシンキングを実践していくようにしましょう。


まとめ

組織でクリティカルシンキングを活用することで、
主体的解決者として、計画立案や問題解決そして意思決定の基盤・技術を築くことができます。

企業を大きく前進させるためにも、
ロジカルシンキングと併せて実践してみることをおすすめします。

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