こんにちは。
リーダーシップの教育についてこんな質問をいただくことがよくあります。
「リーダーシップを執るには、どの様な行動をすればいいでしょうか?」
「リーダーシップ」と一言で言っても、その定義は多岐に渡ります。それぞれのリーダーによって組織を牽引するリーダーシップの執り方が異なる為、個々人の特徴によってリーダーシップの質が異なることは明白です。
リーダーシップの世界的権威であり、世界で初めてリーダーシップ論という学問で教鞭を取ったジョン・アデアによると「リーダーシップは曖昧なものではなく、シンプルに3つの構成要素から成り立っている」としています。
3番目の「機能」に当てはまります。
あなたの会社のリーダーがしている行動と照らし合わせながらご覧いただければと思います。
リーダーシップの要点を理解する
まず理解しておきたいリーダーシップの要点に「組織には、3つの欲求」が存在する事です。
組織にも、個人と同じ様に欲求が存在します。そしてリーダーはこの3つの欲求を満たさなければなりません。この前提を押さえておく事が機能的行動を理解する糸口になります。
3つの欲求とは
組織に存在する3つの欲求とは、下記の通りです。
②組織として団結したいという欲求
③個人が人間として組織に持ち込む欲求
事業を成功に導く組織のリーダーは、3つの欲求を満たす為に、
行動の要点をこの様に解釈しています。
②チームビルディング:組織の団結を保持すること
③人材育成:個々人の欲求を満たし、成長・育成させること
これらの行動要点を理解し、最大化した時に最も良い成果が生まれます。
8つの機能的行動
ジョン・アデアは、リーダーが遂行しなければならない機能的な行動を8つ掲げています。
②計画する
③説明・要約する
④統制する
⑤支援する
⑥評価する
⑦動機づけする
⑧模範となる
具体的にどの様な行動をすれば良いのか、ひとつひとつ機能的行動を解説していきます。
①仕事を明確にする
「仕事を明確にする」とは、
組織として「何をするのか?なぜそれをするのか?」を明確にする機能的行動で、
リーダー自らが組織のビジョンを示す事です。
5W1Hでいうと「What/Why」の部分にあたります。
例えば、同じプロジェクトでも「新規顧客の獲得を最大化する事」と、
「売上を最大化する事」では目的が異なります。
まずは売上ではなく、認知を広めていきたいという目的があるかもしれません。
仕事を明確にする事は、事業を成功に導く為に
「何をするのか?なぜそれをするのか?」という仕事の目的を明確にする事なのです。
組織の使命を考え抜き、目に見える形で明確に確立する事で、
組織内で共通認識を持つ事ができます。
メンバーのひとりでも共通認識が持てていないと、
同じベクトルで進む事はできないでしょう。
事業を成功に導く事は困難です。
まずは組織のミッションを理解し、
目に見える形でビジョンを示す事が機能的な行動にあたります。
②計画する
「計画する」とは、「どの様にミッションを進めていくのか」を明確にする機能的行動で、リーダー自らが組織のプランを示す事です。5W1Hでいうと「How」の部分にあたります。
計画をする上では、セクション毎に仕事の目標を明確に掲げる必要があります。目標達成には「SMARTの法則」があります。
・測定可能な目標か (Measurable)
・達成可能な目標か (Achievable)
・現実的な目標か (Realistic)
・期限付きの目標か (Time Constrained)
これらが明確になると
「どの様にミッションを進めていくのか」というHowも明確になります。
ただ、これらを明確にして計画しても、
予測できない事態によって計画通りに進まない事があります。
計画段階でも不測の事態に備えて「複数の代替案」を計画する必要があるのです。
事業を成功に導く為の、「具体的・測定可能・達成可能・現実的・期限付き」なプランニングをする事が機能的行動にあたります。
③要約・説明する
「要約・説明する」とは、「目的や計画の要点を説明」する機能的行動で、
仕事の目的・計画を部下が理解できる様に説明する事です。
5W1Hでいうと「Who/Where」の部分にあたります。
例えば、製造ラインでは新製品の発売などによって仕事の仕方も変わると共に、
製造マニュアルや安全上の注意事項なども変わります。
組織には経験年数や知識の差があるメンバーが所属する為、
同じ説明でもそれぞれの理解度は異なります。
そこでリーダーがいかにわかりやすく説明できるかが重要になります。
「なる早で!」
「きっちりやっておいて!」
「良い感じにしておいて!」
曖昧な言葉を多様していませんか??
曖昧な言葉が部下を困らせ、生産性の低下を引き起こします。
メンバーそれぞれが何をするのかという役割や配置、
どのような目標を達成する事が必要なのかという共通の目的意識を持った組織は、
いい雰囲気を作り出すことができ、チームワークはより促進されます。
各個人の役割や配置も明確にし、
目標達成にコミットができるような「要約・説明」をする事が機能的行動にあたります。
④統制する
「統制する」とは、「組織の全エネルギーを確かなものにする」機能的行動で、
メンバー個人の自律を促す事が主旨になります。
例えば、リーダーが組織のメンバーに時短を意識させる事によって、
業務の進捗スピードに影響を与え、業務改善を測る事であったり、
仕事を成就させる様にトップダウンの指示を与えたりする事です。
統制する事で分散しがちなベクトルを、
1つに集約し同じ方向に向け組織の全エネルギーを発揮できる様に促します。
また、リーダーが全てを統制する事は困難な為、メンバー個人の自己規律や目標管理を指示する事で、メンバーが自律する様に促します。
「優れたリーダーは最小のインプットで、最大のアウトプットを出します。」
リーダーシップを執る為には、メンバーへの管理能力や効果的委任といった
「コントロールスキル」を機能させる行動が必要なのです。
⑤支援する
「支援する」とは、「物事が円滑に進むように支援する」機能的行動で、
部下に対して「奉仕」の気持ちを持ち、どうすれば部下が持つ力を最大限に発揮できるのか
考え、環境づくりに邁進する事です。
例えば、仕事をする上で安心できない悩みなどがあれば、
部下の話に耳を傾け、環境を改善できる様に努めます。
安心して仕事ができる環境づくりができると、
部下のモチベーションも上がり、業務に邁進する事ができるのです。
こうした「奉仕」の精神の元、部下を中心に考えた組織づくりを行う事で、
リーダーとメンバーの信頼関係を構築する事ができ、協力しながら事業を成功に導く事ができます。
部下のモチベーションを意識すると、
失敗しても学びに変えられる組織づくりができます。
より物事が円滑に進む様に「支援」をする事が機能的行動にあたります。
教育は「愛」です。
愛を持って部下と接していくことが大事ですよね。
・頭ごなしに部下を否定していませんか?
・効率重視で「why?」の暴力をふるってませんか?
本当にその姿勢で、業務効率が上がりますか?会社はよくなりますか?
今一度、理想のコミュニケーションを見直してみましょう。
⑥評価する
「評価する」とは、「成長、発展に向けた振り返りを行う」機能的行動で、
組織の価値観に基づいた評価を考える事です。
例えば、仕事で失敗した事があると何が要因なのか考え、
同じ失敗を繰り返さない様に振り返りをします。
しかし成功した時には喜んで終わってしまう事が多くあります。
成功した時こそ振り返り評価する事が必要なのです。
メンバーそれぞれが失敗した事、成功した事を共有していく組織は、
より発展的に成長していく事ができるのです。
リーダーは業務の指示だけではなく、
組織の仕事で得た結果や業績、過程を評価し、それぞれの役割における評価を行います。
正しく評価できるリーダーがいる組織は
チーム全体で成長していく事ができ、事業の成功に導く事ができます。
失敗しても成功しても、成長・発展的に向けた振り返りを行い、
改善策を特定するなど、部下の役割・能力を正しく「評価する」事が機能的行動にあたります。
⑦動機づけする
「動機づけする」とは、
「内在する欲求に応える」機能的行動です。
メンバー個人に対する、動機づけの方法には2種類あります。
①外在的動機付け:成功に対する奨励・成果報酬によるモチベーション
②内在的動機付け:メンバー自ら発揮するモチベーション
リーダーシップを執る為には、内在的な動機付けが優先されます。
例えば、部下に対して「いつも人が気づかない事に気づいて助けてくれて、ありがとう。」と感謝の気持ちを伝えてみたところ、部下から、「些細な事でも自分を見て評価してくれていると感じました。言葉にしてもらえるとやる気が出ます」という感想が返ってきました。
相手を認めると「内在的な欲求に応える」ことができ、
それだけで大きなモチベーションになります。
リーダーは部下の行動を「認知」し、
部下に「伝える事」で内在的な動機付けをすることができるのです。
普段、部下の行動を認知はしていても、
それを相手に伝えることができているかというと気恥ずかしい部分もあるかと思います。
感謝を伝えることは、部下の「動機づけ」に繋がる機能的行動なのです。
⑧模範を示す
「模範を示す」とは、
「リーダー自身が良き模範となる」機能的行動で、有言実行・言行一致を示していく事です。
先頭に立つリーダーの姿を見て、部下が育つ世界はどこにもあります。
リーダーは常に部下から模倣されている事を認識し、
自らが模範となる行動をしなければなりません。
リーダー自ら掲げたビジョンと異なる行動をすると、組織の成長は見込めません。
悪い見本は目立ちますが、良き模範が部下や組に浸透するには時間がかかります。
良き模範が組織に浸透するまでの間は、ポジティブな行動規範を示す事が求められます。
自分の発言に責任を持ち有言実行・言行一致を続け、
「リーダー自身が良き模範となる」事が機能的行動にあたります。
まとめ
「リーダーシップを執るには、どの様な行動をすればいいでしょうか?」
といただくご質問には、どの様な行動がリーダーシップに結びつくのか、原理原則を理解したいという意図が内在していると解釈しています。
今回は、原理原則を解説した上で具体的な行動案を示し、回答させていただきました。
「あなたの会社のリーダーがしている行動は、いくつ当てはまっていましたか?」
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