組織において、人材育成は永遠の課題です。
特にVUCAと呼ばれる現代においては、組織構造自体の見直しが始まっており、従来の人材育成方法では、効果が発揮されない事もしばしば見られます。
特に部下の育成方法については、様々な手法が存在しますが、「優秀な部下が育つ方法は、これだ!」という絶対的な手法は存在しません。
なぜなら、組織の状況や個人の能力はどれをとっても同じものがないからです。
とはいえ、部下の育成は喫緊の課題であることは変わりありません。
そこで今回は、1on1ミーティング・メンター制度・ジョブローテーションなどと同様に人材育成の手法として用いられる「コーチング」について解説していきます。
人材育成を「将来の企業への投資」と考えている経営者さんの会社では、効果を発揮しやすい手法です。
是非、最後までご覧ください。
コーチングとは?
コーチングとは、上司(コーチ)が質問や傾聴を通じて、部下(クライアント)の自律や成長を支援する手法です。
コーチングにおいては、上司と部下は対等の立場にある為、「部下の自律を支援するコミュニケーション技術」と言えます。
「馬車(コーチ)がクライアントを目的地へ到達させる」という語源をイメージすると分かりやすいかもしれません。
コーチングは、命令や指示によって強制をすることはなく、問いかけや双方の合意によって、「向かう方向」を決めていきます。
リーダーのマネジメントスキル向上などを目的に、多くの企業で取り入れられています。
コーチとクライアントとの関係
コーチングの大きな特徴が、コーチとクライアントは対等の立場である、という事です。
先述の通り、コーチングは、命令や指示によって強制するのではなく、問いかけや合意によって、「向かう方向」が決められます。まずは、「コーチ=サポート役」「クライアント=主役」のスタンスをそれぞれで認識を双方でしっかりもちましょう。
コーチは傾聴や質問などのコミュニケーションを通じて、クライアントから「答え」を導き出すサポート役にすぎません。クライアントが自分の中にある「答え」を見つけ、気付いていく主役なのです。
そして、双方のコミュニケーションによって成立する為、コーチとクライアントの信頼関係が不可欠です。
コーチがどれほどコーチングのスキルを学び習得したとしても、クライアントからの信頼を得られなければ、思うような成果は期待できないことを認識しておく必要があります。
コーチングのメリットとデメリット
ここでは、コーチングのメリットとデメリットについて解説します。
コーチングのメリット
- 主体性が高まる
- 育成ターゲットの可能性や個性を引き出す効果が期待できる
- 学習意欲の向上
クライアントは、コーチの働きかけによって、潜在的な部分も含め自分の中にある“答え”を見つけ出します。
コーチからの質問によって自ら考え、行動すること、つまり、自律性を養うことが次第にできるようになっていくのです。
コーチングのデメリット
- 多数を一斉に育成できないため、非効率的
- 効果が出るまで時間がかかる
- 育成者にコーチングのスキルが必要
コーチはクライアントの悩みに対して臨機応変に対応する必要があり、豊富な知識や経験が求められます。
コーチングを実施する際には、メリットとデメリットに触れ、コーチが「正しいやり方」を理解し、適切なアウトプットを行えるようにすることが欠かせません。
具体的なコーチングの実施方法
では実際に、コーチングを実施してく際の手順について詳しく見てみましょう。ステップは5つあります。
- コーチングの準備
- 想定される懸念点の理解
- コーチングの計画立案
- コーチングの実施
- フィードバックの実施
①コーチングの準備
コーチングは、対象が決まったからと言って、突然始められる事ではありません。
あなたは、コーチングの目的を明確にできていますか?
コーチングの実施には、入念な準備が必要です。
- コーチングの目的を明確に理解する
- ゴールを設定する
- クライアントが有するスキル・知識を把握する
- クライアントの課題を抽出する
- クライアントの直属の上司と打ち合わせ
- 対等なコミュニケーションが実現できる環境の確保
コーチングの目的は「クライアントの成長を支援すること」です。
コーチングを終えた時、クライアントにどのような状態になって欲しいか、明確なゴールを設定することが重要なのです。
②想定される懸念点の理解
コーチングの準備ができたら、計画立案へ進む前に「想定される懸念点」について理解しておきましょう。事前に懸念点を押さえておくことで、コーチングの実施で問題が起きても落ち着いて対応することができます。
こちらが、よくある想定される懸念点です。
- 選定したクライアントが、コーチングの対象に適していなかった
- コーチがコーチングスキルを習得しておらず、収拾がつかなくなってしまう
- コーチとクライアントが上司と部下である場合、一方が苦手意識を抱いている場合がある(相性が合わない、そもそも信頼関係が構築されていないなど)
- コーチのフィードバックでクライアントが自信を喪失し、ネガティブになってしまう
- クライアントが第三者に知られたくない情報を、コーチが外部に漏らしてしまう
- 記録を残していなかったがために、言った言わないの水掛け論に発展してしまう
- コーチングの優先度を低く設定してしまい、時間の確保ができない
- コーチングのゴール設定に、コーチとクライアントの合意形成が行われていない
- クライアントに、コーチングに臨む姿勢が備わっていない
想定される懸念点の多くは、コーチとクライアントの「コーチングへの理解が不足」が原因です。
コーチングについて正しく理解できていない部分は、明確な目的を共有した上で理解を促すことが重要です。
③コーチングの計画立案
コーチングの実施に向けて、計画を作って行きます。
コーチング計画は3段階で立案していきます。
- コーチング実施の目的を共有
- 両者で計画を打ち合わせ
- 計画を元にルール策定
①コーチング実施の目的を共有
- クライアントを選定した理由や背景
- コーチングの概要や目的、実施期間を共有
- 双方が合意したゴールの設定
ここで重要なのは、コーチングでは、コーチとクライアントは対等の立場であることです。
双方が納得した状態でのゴール設定を念頭におきましょう。
②両者で計画を打ち合わせ
- コーチングのゴールから逆算したプロセスの共有
- 具体的な計画への落とし込み
理想やあるべき姿から計画に落とし込むと、実現できなかったり負荷がかかった計画になります。
実現可能な計画になっているか、両者で打ち合わせしながら計画しましょう。
③計画を元にルール策定
クライアントはどのように振り返りを行うか、報連相はどのタイミングでどのように行うか、
セッションの内容をどのように記録に残すか、守秘義務についてどう共有するかなど、計画と同時に、ルールの設定も行いましょう。
計画をより効果的なものとするためにも、ルール作りが肝心です。
④コーチングの実施
計画の立案が終わると、いよいよコーチングの実施に移ります。
先述下通り、コーチングに上下関係はありません。コーチとクライアントが対等な立場でコミュニケーションを重ねていきます。
そしてコーチングは、コーチが質問や傾聴を通じてクライアントから“答え”を導き出すことで、クライアントの成長支援を行うことが目的です。
信頼関係なくしてコーチングは成立しないことを、コーチは肝に銘じて臨みましょう。
⑤フィードバックの実施
コーチングの実施に伴い、実際にどのようなことが起こったか、そこから次へどうつなげていくかというフィードバックを実施します。
フィードバックにあたっては、クライアントが事実に基づいて(ファクトベースで)「客観的」に自身の振り返りを行うことが重要です。
クライアントが自身の振り返りを行い、それを踏まえてコーチからフィードバックを受ける、という順番が一般的です。
ここで、コーチは自身のフィードバックがクライアントの成長に繋がるんだという意識を強く持ち、現状と目標とのギャップを明確にし、かつ具体的なフィードバックができるよう臨んで下さい。
まとめ
コーチングとは、コーチが質問や傾聴を通じて、クライアントから“答え”を導き出すことで成長を促す、いわば「クライアントの自律をサポートするコミュニケーション技術」です。
コーチングを実施するうえで、コーチとクライアントの信頼関係構築が必要不可欠であること、コーチとクライアントは対等な立ち位置にあること、コーチはクライアントの成長を支援するためにも、コーチングの正しい知識を理解・実践する必要があることを概要に触れながらご紹介しました。
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