こんにちは。
あなたは、部下に期待していますか?
この質問にすぐにYES!と答えられる人は、今回解説する「ピグマリオン効果」をすでにご存知で、実践していらっしゃるかもしれません。
すぐに答えられなかった人は、このまま読み進めていただければ幸いです。
ピグマリオン効果:
「人は、期待されるとその期待に応える様に結果を出す」という心理学のこと。
今回は、「ピグマリオン効果」を正しく理解していただき、
客観的に効果があるのか、部下を成長させる期待の仕方など、
ビジネスの現場における活用法を紹介していきます。
ピグマリオン効果とは?
ピグマリオン効果とは、人は、他者からの期待を受けることで、期待に応える様に成果を出す。と言う心理効果の事です。
アメリカ教育心理学者のロバート・ローゼンタール氏らが1968年に提唱した心理学の用語で、教師からの期待があるかないかによって、生徒の学習成績が左右されるという実験結果を報告した事が始まりでした。
ローゼンタール氏の実験では、学校の生徒にテストを受けさせ、
後日担任の教師にだけ「伸びしろが大きい」とされた生徒の名前が伝えられました。
そして「伸びしろが大きい」とされた生徒は、実際に成績を伸ばしたのです。
しかし実は「伸びしろが大きい」という情報は、全くのデタラメだったのです。
テストの成績に関係なく、
ローゼンタール氏らの実験者がランダムに選出しただけだったのです。
この実験結果から「他者から期待される事によって、成長が促される」という結論が導かれました。そして、この効果は「ピグマリオン効果」や「ローゼンタール効果」「教師期待効果」と呼ばれるようになりました。
ピグマリオン効果の由来
では、ピグマリオン効果の「ピグマリオン」とは、どこから由来したのでしょうか。
心理学者の渋谷昌三氏によると「ピグマリオン」とは、ギリシャ神話に登場する王様の名前なのだそうです。キプロス島にいたピグマリオン王は、自らが彫った女性像のあまりの美しさに恋をしてしまいます。どうにかして女性像が本物の女性に変わってくれないかと、心から願っている様子を見た神様が、女子像の彫刻に生命を吹き込んだのです。そして、ピグマリオン王はめでたく、女性と結婚する事ができました。
この神話から「心から期待していれば、良い結果が訪れる」という意味で、ピグマリオン効果と名づけられたのです。
ピグマリオン効果と反対の考え方
ピグマリオン効果とは反対に、周囲から期待されていない人の成績や成果が平均値を下回るとされる「ゴーレム効果」があります。
ビジネス心理研究家の神岡真司氏によると、ゴーレム効果とは「相手に見込みがないなど悪い印象を持っていると、実際に悪い成果に向かって行く」という心理効果です。
ただ、上司から見ると
「おい、もっと頑張ってくれよぉ」と思ってしまいますよね。
部下に対して、ネガティブな発言をしそうになったそんな時は
その気持ちをグッと堪え「期待しているよ」と言ったポジティブな言葉をかける事で、
ピグマリオン効果による成長を期待する事ができます。
部下の人材育成における具体例
部下や後輩を育成する場面では、ネガティブな言葉をかけるのではなく
「君に期待しているよ」という姿勢を崩さない事が重要です。
ネガティブな言葉をかけようとする場面では「期待」や「希望」を伝える言葉に変換して伝える事を心がけてみましょう。
例① 同じミスをする部下
「何回も同じ事を言わせるなよ」
何度も同じミスを繰り返す部下がいると、このように言ってしまうこともありますよね。。
しかし、部下の成長を促す為には、この様な前向きな言葉に変換してみましょう。
「このミスがなくなれば、次のステージに大きく前進するはずだよ」
部下は気分を損ねる事なく、素直に指摘を受け入れることができます。
まず、上司が部下に対して期待をかける事をきっかけにしましょう。すると部下は、
- リーダーの期待に応えようとする
- 主体的に行動するようになる
- リーダーへの報告・連絡・相談の機会が増える
- リーダーは部下を気にかけるようになる
という好循環を生み出すことができます。
結果的に、部下の成長を促す事ができます。
例② 見た目の清潔感が欠けている部下
「どうして、そんなに身だしなみが悪いんだ。ピシッとしろ」
身だしなみが悪く、清潔感に欠けている部下がいると、
この様に言ってしまいそうになりますよね。。
しかし、部下の成長を促す為には、この様な前向きな言葉に変換してみましょう。
「身だしなみを少し気をつければ、もっとカッコ良くなれるはずだよ」
前向きな言葉に変換して伝える事で、ピグマリオン効果を期待することができます。
ただこの様に「褒めて伸ばす事」を実践してみても、
すぐに効果が現れない事もあります。
しかし、リーダー自身が気長に構え「期待していますよ」という姿勢を崩さない事が重要なのです。
ピグマリオン効果を最大限に得やすい期待
ネガティブな言葉をかけようとする場面では
「期待」や「希望」を伝える言葉に変換して
伝える事を心がける重要性は理解できたかと思います。
ただ、ここまでの内容は、一方的な理想像を押し付けている印象があります。
それで、ピグマリオン効果は発揮できるのか?
ピグマリオン効果を最大限に生かすには、
どのような期待をかける事が正しいのでしょうか?
その答えは「本人の自主的なやる気を引き出す期待」「リーダー自らが行う期待を表す行動」
について、きちんと認識する必要があります。
ピグマリオン効果が最大限に出やすい期待には下記が挙げられます。
- 部下が自主性を持って行動する事に対して、肯定的な関心を持つ
- 目標達成までの過程ではヒントを出し、うまくいかなかった時は正確なフィードバックを与える
- 目標達成までの過程の要所要所で褒める、認める
- 結果を焦らずに、部下自身が試行錯誤をし答えを出すまで見守る
リーダーはピグマリオン効果とは逆効果のゴーレム効果に注意しながら、
部下の成長を促す期待の方を行動で示すように心がけましょう。
部下を成長させる期待の仕方
人材育成や組織運営で、ピグマリオン効果を生かす具体的方法は6つあります。
- 期待を必ず言葉で伝える
- 裁量を与える
- 成功体験を経験させる
- 目標達成の過程を褒める
- 過剰な期待をかけない
- 公平な評価制度を構築する
①期待を必ず言葉で伝える
期待は、必ず言葉で伝える様にしましょう。
期待している事を行動や態度だけで示すには限界があり、
言葉でストレートに伝える事が重要です。
- これまでこんな事をしてこれたのだから、君にはできる
- 昔はこうだった君が、今はこうなったのだから大丈夫
といった言葉でサポートします。
②裁量を与える
裁量を与える事は、期待している事を暗に伝える事ができます。
この時の注意点は、裁量を与えた業務に対する、指示や口出しは一切しないと言う事です。
裁量を与えた業務に対して口出しをすると、信じて任せられてないんだ、、と部下が感じてしまう事に繋がります。
過保護にならず、裁量を与えた業務は見守る事が重要です。
③成功体験を経験させる
成功体験をいくつも経験する事は、成長において重要です。
成功する為の課題は、難しすぎても簡単すぎてもいけません。
部下の能力を大きく超える課題を与えても、達成できなければ自信を失ってしまいます。
部下の能力に応じた達成可能な課題を与え、成功体験を経験させる事で、
大きな成果を生み出せるように成長して行くのです。
④目標達成の過程を褒める
モチベーションを維持する為には、目標達成の過程を褒める事が重要です。
リーダーから「もっと頑張れ」と叱咤激励されるよりも
「頑張っているな」と過程を褒められた方が
モチベーションは高まり、成果を出しやすくなります。
また、結果だけでなく
プロセスも見守ってくれているのだと、暗に部下に伝える事ができます。
つまり、「期待されている」と部下は感じます。
褒められて嫌な感情を持つ人はあまりいません。
ただ、自分にとって価値がないと思っている事をリーダーから褒められても、
モチベーションに繋がらない事も認識した上で
「認めている」という事を表現する様に心がけましょう。
⑤過剰な期待をかけない
時に、過剰な期待は、マイナスの感情を引き出す要因になってしう可能性があります。
「そんなに期待されても応えられない」といった感情は、
成果や成長には繋がりにくくなってしまいます。
部下に対する期待値は、
「部下の性格・能力・状況」などを踏まえて設定する事を心がけましょう。
⑥公平な評価制度を構築する
部下に対して期待するだけでなく、公平な評価制度に基づいた部下の評価も重要です。
「期待だけされて頑張ったが、評価には全く繋がらなかった。」
といった誤った認識を与えてしまう恐れがあります。
公平な評価制度の下に、
期待された成長や成果が評価される環境を整備して行く事が望ましいといえます。
最後に
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